研究者らが熱帯泥炭地におけるメタン排出についての新たな研究成果を発表
熱帯泥炭地における温室効果ガスの排出に関する科学調査プロジェクトが、インドネシア・スマトラ島のリアウ州におけるメタン(CH4)ガス排出に関する初の研究結果を発表しました。
この研究では、熱帯泥炭地がCH4の主な排出源であり、地球の大気濃度に対してこれまで考えられていた以上の影響を与える可能性があることが判明した一方で、地下水の水位とさまざまな土地利用の種類におけるメタン排出との関係性を新たに確立しました。
渦相関法技術を用いて熱帯泥炭地におけるメタン排出を評価するはじめての研究は、スマトラ島リアウ州の原生林およびプランテーション全体のメタン排出を2年にわたり集中的にモニタリングするプログラムの一環であり、インドネシアやイギリス、フィンランド、アメリカからの世界的な科学者のグループによって実行されました。調査結果の全貌は、こちらで閲覧可能です。
エイプリルグループ後援によるこの研究は、熱帯泥炭地における排出要因の現在の理解を確立し、熱帯泥炭地の管理と温室効果ガスの排出との間の関係性について知識を深めることを目的としています。
エイプリルグループの温室効果ガスモニタリング担当部長であるチャンドラ・デシュムーク博士が中心となって行われた相互評価研究では、地下水の水位がメタン排出の変数を制御しており、地下水の水位が高ければ高いほど、原生林からのメタン排出が多くなることが判明しました。研究によれば、地下水の水位が下がれば、メタン排出量も減少するとのことです。
メタン排出量の計測は渦相関法技術を用いて実施され、プランテーションおよび原生林地域に設置された高さ40mおよび48mのフラックス計測タワーからのデータを利用しました。フラックス計測タワーは30分ごとの高い頻度の計測を可能にし、それぞれのタワーは200ヘクタール以上の地域をカバーしています。
渦相関法技術は、生態系と地表の大気の間でのメタンの除去と排出の間の総交換量または均衡を算出するために設計されたものです。その結果は、原生林とアカシア・クラシカルパのプランテーションの間のメタンの総交換量の不均衡を定量化するのに用いられています。
この研究結果の発表は、エイプリル社が第三者泥炭地専門家ワーキンググループと共同で行った一連の泥炭地調査の結果発表の第一弾として行われたものであり、熱帯泥炭地における温室効果ガスの排出に関して、さらには二酸化炭素や亜酸化窒素の排出についても焦点を当てています。
メタンが最も影響力の強い温室効果ガスであり、放射線の捕捉および大気の温暖化において非常に効率的であるため、メタン排出を把握することは調査プロジェクトの重要な側面のひとつであります。1キログラムのCH4で、1キログラムのCO2が大気に排出されたのちに20年間にわたって温暖化させる84倍も地球を温暖化させる効果があります*。メタンは低酸素条件における分解のような自然の作用や、農業や園芸といった人間の活動によって生成されます。
この新たな研究結果は、熱帯地域におけるメタン排出の理解に寄与するものであり、重要な調査上の空白を埋めるものであります。研究の共著者であり、インドネシア土壌調査研究所の職員であるファーマディン・アーガス教授によれば、「熱帯泥炭地は大気へのメタン排出源として有名であるが、大気中のメタンに対する影響度はほとんど理解されていない」とのことです。
「この研究は、熱帯泥炭地におけるメタンの循環について、われわれの重大な知識の空白を埋めるものです。研究結果によれば、熱帯泥炭地は大気中のメタン濃度にこれまで考えられていたよりも大きな影響を与える可能性があります」と教授は述べています。
研究の共著者のひとりであるライチェスター大学のスーザン・ペイジ教授は、このように述べています。「原生林からの年間のメタン排出量は、アカシアプランテーションからの排出量のおよそ2倍も高かったことが分かりました」。
研究結果は熱帯泥炭地について世界規模で報告された初の渦相関法によるメタン交換量データの一部であり、主要な泥炭地の生態系から排出されるメタンの推定値における不確実性を低減するのに役立つはずである、とイギリスの生態・水文学センターのクリス・エヴァンズ教授は述べています。
また、「この研究結果によって、熱帯泥炭地における土地被覆の変化の影響をより完全に推定することができ、温室効果ガスの排出を最小化するうえで科学に基づいた泥炭地管理活動を開発するのに役立つ」とも述べています。
デシュムーク博士は、ペイジ教授やアーガス教授、エヴァンズ教授、ボゴール農科大学のスピアンディ・サビハム教授、東フィンランド大学のアリ・ローレン教授、ウィンスコンシン・マディソン大学のアンクール・デサイ教授、バーミンガム大学のヴィンセント・ガウチ教授らを含む世界的な科学者のチームの後援を受けた。
また、研究チームは、ソフィアン・カーニアント博士、ヨギ・スアルディウェリアント氏、ドニ・ジュリアス氏、アディブティア・アシハリ氏、アリ・スサントし、ナルディ氏を含むエイプリル社の研究者チームによる貴重な支援を受けています。