ランドスケープ・アプローチを理解する
ランドスケープ・アプローチは、人と自然生態系は持ちつ持たれつの相互依存関係にあるという統合的かつ全体的観点に立脚した土地利用・管理プランニング理論であり、今も進化の途上にあります。
ランドスケープ・アプローチは、土地を単独で捉える限り土地保全は不可能であることを理解しています。この理解を踏まえ、持続可能な農・林産業を実践し天然資源の保全を図ることによって、ランドスケープ・アプローチは、保全、天然資源の利用、そして生活改善のバランスを模索します。
2017年9月、自然保護・回復関係の活動に携わる実務者34名が北カリマンタン州セトゥラング村に集いました。「教訓に学ぶランドスケープ・プラクティショナー・リトリート」と題するこの集いは、タナアイルベータ・ファウンデーションとジェームズクック大学を中心に企画されたもので、経験の共有や課題についての意見交換が行われました。
タナアイルベータ・ファウンデーションは、東南アジアおよび太平洋地域のチームと共に、陸海双方のランドスケープ(ランドスケープ&シースケープ)レベルにおける保全目標実現を目指し、学術知識および技術の共有のためのプラットフォームとして機能しています。同時に、人里離れた森林や沿岸地域におけるコミュニティの生活向上を支援しています。インドネシアでは、スマトラ、西&北カリマンタン、北スラウェシ、フローレス、ロンボク、西パプアの各地においてパートナーシップ確立に向けた動きが始まっています。
リトリートの集いでは、Qメソッド(環境調査における社会的パースペクティブを特定するシステム)を用いて、インドネシアのランドスケープの最適機能を妨げている諸要因を定量化し、ランドスケープ・アプローチと他の方法論との違いについて討議しました。
セトゥラング村での5日間の集いで、RER(リアウ生態系回復)プロジェクトのメンバーは、インドネシア、リアウ州のカンパール半島およびパダン島における泥炭林150,000ヘクタールの管理と回復における経験に関するケーススタディを発表しました。
RERプロジェクトは、東南アジア最大の景観レベル回復プログラムの一つとして2013年にエイプリル社によって着手されました。生産林に囲まれた回復サイトでは、生態学的に重要性の高い泥炭林の浸食の脅威を最小限に抑えることを狙いとし、4フェーズの保全モデル‐‐保護、評価、回復、管理‐‐を軸とした活動が展開されています。
RERのブラッドフォード・サンダース氏は、リトリート参加者から多くの教訓を学んだと、次のように語りました。
「現場における生態系回復管理の大きな課題は、森林の保護と回復と生物種多様性の保全の必要性について、同時に森林資源を過剰搾取することなしに人々の生活向上を実現することについて、地元住民や外部ステークホルダーの理解と賛同を得ることです。バランスを確立することが、この課題の成否のカギを握ります。」
その他、リトリートにおいては、次のランドスケープ・アプローチのケーススタディが発表されました:
- CIFORのブルンガン調査林(マリナウ)
- ICRAFのタンジャバールREDDプログラム
- ブルング・インドネシアのンベリリンおよびフタンハラパン・プログラム
- ブルングのゴロントロ・プログラム
- ファウナ&フローラ・インターナショナルのケタパン・オランウータン・プログラム
- ロンドン動物学会のスンビラン・プログラム
収集データは、リトリートに参加したジェームズクック大学の大学院生によって分析され、結果が公表されることになっています。
ジェームズクック大学のジェフ・セイヤー教授によれば、「多くの人々が、ランドスケープ・アプローチは、インドネシアにおける天然資源管理が直面している数多の問題の解決策となると信じています。」
「過去に生み出された期待をすべて実現可能となるためには、私たちは教訓を共有し、最適実務指針を確立する必要があります。」
次のランドスケープ・アプローチ・リトリートは、2018年にリアウ生態系回復プロジェクト・サイトにおいて開催の予定です。