生態系回復の舞台裏:リアウ環境回復(RER)に取り組む現場チームに敬礼
フォーナ・フローラ・インターナショナル(FFI)はRERの技術面におけるパートナーであり、生物多様性、気候およびコミュニティに関して、プロジェクトの主要な要素を扱っています。その役割の一環として、FFIはカンパール半島の生物多様性について詳論した重要なレポートを発表しました。この画期的な取組みは、カンパール半島全域の長期的な保護と回復を目的とした、包括的な管理計画を設計・実施するにあたり、生態系学的なベースラインを設定するために2015年にカンパール半島で実施された一連の調査の成果です。
このレポート発表の節目にあたり、FFIアジア太平洋地域担当部長トニー・ウィッテン博士は、勤勉で献身的なFFIの現場チームがカンパール半島の厳しい地形の奥深くで行った困難な研究に対して感謝の意を述べています。
筆者紹介:
トニー・ウィッテン博士、フォーナ・フローラ・インターナショナル(FFI)アジア太平洋地域担当部長
トニー・ウィッテン博士は保全活動に関わる宿命にありました。ピーター・スコット卿やデイビッド・アッテンボロー卿のような動植物学者たちに感銘を受け、彼らに憧れを抱きながら成長した博士は、4歳までには自らの進む道を決めていました。博士は、サザンプトン大学で生物学の勉学に励み、後にスマトラ島西部の辺境のシブルー島で絶滅の危機に瀕しているクロッステナガザルの研究を行い、ケンブリッジ大学でPh.Dを取得しました。これがはからずもその後の彼のキャリア人生を決め、インドネシアやアジア太平洋地域の野性生物の驚くべき多様性に注目するようになったのです。博士は、インドネシアの島嶼の生態系から淡水魚や陸産貝類にいたるまで、数多くの書物を著してきました。博士は2010年にアジア太平洋地域部長としてFFIに加わり、スマトラ半島の虎の保全からカンボジアの海洋・沿岸海域の研究やカリマンタン半島のレッドプラス(REDD+)プロジェクトまで、途轍もなく幅広いプロジェクトを監督しています。
殆ど知られていない地域で幅広い生物多様性の調査を実施することは、多くのフォーナ・フローラ・インターナショナル(FFI)職員が望むことですが、その機会をつかむ人はごく僅かです。ある地域の種を発見・観察・撮影・識別し、それについて報告することは、生態系の機能の仕方やその保全のために必要とされる管理措置の理解に欠かせません。
サマリーレポートに目を通し、現場チームが撮影した美しい写真を眺めながら、それらの背後に何があるかを考えてみてください。温血動物が近付くと自動でシャッターが切られるように入念に配置されたカメラトラップで撮影されたものもありますが、その多くはまさに隠れて、辛抱強く、技を駆使して撮影されたものです。
カンパール半島のような泥炭湿地は、人が住むのに適した場所ではありません。歩いて通ることすら困難です。多くの深い川があり、重なり合ってもつれた根は油断した歩行者を躓かせ、固まった泥炭表面はいつ崩壊して歩行者を暗褐色の泥水に腰まで浸からせるか分からず、ノコギリ状のパンダンの葉は一方向に通り過ぎることはできても逆方向に触れると皮膚に切り傷をつけます。
調査の計画段階では、サンプリング・トランセクト法やコンドラート法が綺麗な直線で地図に描かれています。しかし現場では、森林がこれを阻みます。樹齢や不安定な根付き、強風に煽られるなどして、木々がトランセクトに倒れているのは日常的な光景です。1本の木が倒れると、互いに蔓で繋がり、または単に倒れる方向に存在しているというだけで、他の木々も一緒に倒れる。小さな木々やその他の植物は林床に差し込む日光をできるだけ多く得ようと競争を始め、凶暴なパンダンが繁殖し、パイオニアたちの歩みは遅々として進まないのです。
私はそのような研究について、多少は理解しているつもりです。妻と私がスマトラ島西部のシブルー島で2年にわたり大学院の研究を行ったとき、4,500ミリの年間降雨量と苦闘せざるを得ませんでした。4,500ミリというと、およそ2階建てバスの高さです。衣類も靴も、私たちの身体までもが腐りました。私たちは数週間ごとに鮮やかな紫色の過マンガン酸カリウムを足に塗り、足に生えるコケと闘わなければなりませんでした。
FFIチームは1回につき2、3週間の野外調査に出ます。日中に調査する者もいれば、夜間調査する者もいますが、観察やデータ収集に直接関わっていないときは、日中の(または夜間の)調査記録を書き、写真のバックアップを取り、それらを分類し、データ分析を行い、そして翌日のルートと作業の計画を立てています。
我々の調査チームは自分たちで食事を作り、全員でその準備と片づけに加わります。我々のカメラトラップチームは転々と移動しているので、彼らの野営地宿泊は非常に簡易的で、雨が降っても(「雨林」とはよく言ったものです)使える軽量・小型のアルコール・コンロで調理します。
食事は大抵、米、小魚の干物、イワシや肉の缶詰、あるいは調理済みのルンダン(水分を飛ばしたココナツ・ミルク、チリパウダーやその他の香辛料でじっくり煮込まれた美味しい牛肉料理で、冷蔵しなくても長期保存が可能)です。朝には甘いコーヒーや紅茶がチームを元気づけます。おやつとしてキャンディー、具入りのチョコバーやヤシ糖もあります。夜明け前に起床して呼子鳥や動物の個体数調査を行わなければならないチームには、朝食前のクラッカーやクッキーが用意されています。
現段階で確認できることは、我々が遭遇した種は、スマトラ半島東部の泥炭湿地の森林での発見が予想された種とマッチしているということです。虎が存在することは分かっていますが、絶滅の危機にあるマレーヤマネコに関する複数の記録の方が重要だと言えます。マレーヤマネコは泥炭湿地の森林のような湿地帯を好むことが知られていますが、めったに出会うことはありません。希にしか見られない鳥類を発見したときの嬉しい驚きもあり、きっと野営チームはその話で盛り上がったことでしょう。
FFIのRERとの連携は今も続いています。我々は情報の確かなベースラインを構築するためにRERの保全所有地の他の地域の生物多様性を調査しており、回復プログラムが進むにつれ、あらゆる変化が観察されます。
しかし、ひとまず、我々の現場チームの若き男女に敬礼を!